DAVID BANNER “MISSISSIPPI : THE ALBUM”

ミシシッピのデュオ、CROOKED LEETAZの片割れDAVID BANNERのソロ・デビュー作。

典型的なダーティー・サウスの殺伐とした楽曲が続く前半部も良いが、このアルバムの真価は中盤以降にある。地元ミシシッピのタウン・ガイド代わりのタイトル曲”MISSISSIPPI”で美しいギターの音色が鳴り出すと、ジャケの印象とはかけ離れた繊細なプロダクションがアルバムを支配し始め、DAVID BANNERのガナリにも苦悩と悲哀の表情が顔を見せ始めるのだ。ボキャブラリーこそ貧弱だが、不条理と抑圧に満ちた日常を生き残るとてつもない力強さが彼のヴォーカルの端々感じられ、凄まじい存在感を放つ。「そもそも生まれてこない方が良かったのかも」と嘆く”CADILLAC ON 22S”や、生き急ぐなと諭す”FAST LIFE”、貧困層ばかりが戦争に送り出される現状を嘆くノンクレジットの隠しトラックなど、泥臭いブルーズ感覚が深南部に脈々と息づいている事を思い知らされる。

前述の”MISSISSIPPI”を筆頭に、”CADILLAC ON 22S”、”MY SHAWTY”などで聴ける、ギターやストリングスを効果的に使ったウットリするようなプロダクションはDAVID BANNERの非凡なプロデューサーとしての才能を証明しているし、”CHOOSE ME”(BILLY HUMEとLIL’ JONの共作)や”BUSH”でのSKYなるヴォーカリストの使い方も実に上手く、唸らされる。

昨今のサウスの勢いを象徴するようなアルバム。サウンド、ヴォーカル両面で多彩な表情を聴かせるDAVID BANNERの魅力が詰まった傑作と言って良い。