EMINEM “THE EMINEM SHOW”

別人格SLIM SHADYの毒々しい世界が新鮮だった”THE SLIM SHADY LP”、自らの人生に対する憤りを包み隠さず吐き出した”THE MARSHAL MATHERS LP”。今回初めてEMINEMというMCネームをタイトルに冠したアルバムをリリース。だが、そもそもSLIM SHADYとMARSHAL MATHERSが同居していたのがEMINEMというペルソナだったわけで、結果的にどっちつかずの中途半端なアルバムになってしまった。

典型的なEMINEM節を聴かせる”WHITE AMERICA”(”俺が黒人だったら、半分も売れてない”)に始まり、相変わらず母親に対して悪態をつく”CLEANIN OUT MY CLOSET”、名声に戸惑う”SAY GOODBYE HOLLYWOOD”、娘ヘイリーに捧げた”HAILIE’S SONG” 等の前作で顕著だったパーソナルなリリック、J.D.やCANNIBUSに対する強烈なディス”SAY WHAT YOU SAY”など、EMINEMの真髄とも言える歯に衣着せぬ毒々しいユーモア溢れるリリックはオリジナルだし、ドープ。

EMINEM本人が大半を手掛けるプロダクションも良い。”SQUARE DANCE”や”HAILIE’ SONG”、”‘TIL I COLLAPSE”は特に気に入ったが、DREが手掛けたとしか思えないこれらのプロダクションを聴くと、どの程度本人がやっているのかは疑問だが。そのDREも、シンプルな”SAY WHAT YOU SAY”や”MY DAD’S GONE CRAZY”等で余裕の仕事振り。

逆に、平凡な”BUSINESS”や”SOLDIER”、自己パロディーに成り下がった”WITHOUT ME”、やりすぎ感満載のAEROSMITHのカヴァー的な”SING FOR THE MOMENT”など、失望させられる曲も少なくない。女ネタ”DRIPS”と”SUPERMAN”辺りは、明らかに余計。

決して悪いアルバムじゃないのだが、駄曲の多さが全てを台無しにしているように思えてならない。全体的に、焦点がぼやけてしまった。大体、77分も入れる必要があったのか疑問だ。何曲か削って、タイトにまとめればもう少し違って聴こえただろうに残念。