EMINEM “ENCORE”

EMINEMの4作目。

前半に良い曲が揃っていて、一安心といったところ。自叙伝”YELLOW BRICK ROAD”、彼を取り巻くビーフ騒ぎに答える”LIKE TOY SOLDIERS”、反ブッシュ・ソング”MOSH”といった佳曲が並ぶ。これらの曲では、前作リリース以降EMINEMの周辺で起きたビーフ騒ぎや人種差別テープ発覚事件について率直にライムしている。

が、中盤以降ははっきり言って退屈だ。元嫁キムに罵詈雑言を浴びせる”PUKE”や”CRAZY IN LOVE”にはいい加減食傷気味だし、”MY 1ST SINGLE”から”ASS LIKE THAT”に至っては、スキット込みで7曲に渡ってひたすらクリストファー・リーブやヒラリー・ダフ、ジャスティン・ティンバーレイク、オルセン姉妹、そしてマイケル・ジャクソンなどをコケにする。とはいえ後半には数曲良い曲が残っていて、娘へイリーへの思いを切々と語る”MOCKINGBIRD”などはお約束だが少なくともD-12と一緒にギャングスタぶってるよりは全然良いし、御大DR DREが渋い所を聴かせる”ENCORE”は、アルバムを締めくくるのに相応しい佳曲だ。

トラック面は、前作より充実している。変に”狙った”のは”JUST LOSE IT”とHEARTをモロ使いした”CRAZY IN LOVE”ぐらいなもので、前述したように全体的に抑えた出来で気に入った。クレジットはEMINEMとDR DREで分け合っていて、どっちが手掛けた曲も同じフォーミュラで構成されているため、アルバムを通して一貫した雰囲気を保っている。

基本的に、前作”THE EMINEM SHOW”をなぞったような内容。”SLIM SHADY LP”や”MARSHAL MATHERS LP”の頃のスリルはないし、前作に続いて70分を越えるボリュームには頭を傾げたくなる。中盤をごっそりカットして、ボーナス・ディスクに収められた3曲を差し替えた方が、全体的にソリッドなアルバムになったであろう事は明白だ。