J-ZONE “A BOTTLE OF WHUP ASS EP”

大学の卒業プロジェクトだったという”MUSIC FOR TU MADRE”でデビューしたJ-ZONE。当初は非売品だったにも拘らず、じわじわと評判になり、結果的に海外で発売されるまでになった。この”A BOTTLE OF WHUP ASS”は、そのフォローアップの自主EPだ。

J-ZONEとそのクルー達は、独創的なリリックを聴かせてくれる。警察無し=何でもあり。”NO CONSEQUENCES”ではそんな夢のような一日を、病んだユーモアでラップ。女優ルーシー・ルーへの只ならぬ欲望を”THE SMURF SYNDROME”で吐き出すJ-ZONEはプロダクションでも光っていて、オルガン・サンプルなどを多用し、完全にオリジナルでムーディーな雰囲気を演出。酒問題を抱える事を素直にラップしたAL-SHIDのソロ”190″では、J-ZONEはプロダクションに専念、再びドープなトラックで仲間をサポート、宗教や聖書に言及したHUGGY BEARのソロ”HOLY WATER”は、病んだユーモアに満ちたEPには微妙に場違いだが、HUGGYのポテンシャルを感じさせるドープ・チューンだ。J-ZONEの多彩さが良く分かるのが”CALAMINE LOTION”。最高にファンキーなトラックに乗るタイトなスクラッチは、意外にもJ-ZONEの仕業。

ニューヨーク・ヒップホップの伝統を忠実に受け継ぎながら、ココまで新鮮で質の高いヒップホップを展開するアーティストは、今では珍しい存在だ。癖になるサンプリング・ループ、グルーヴ感満載のビート、タイトなリリックにフロウ。ビートは勿論、ライムからスクラッチにレーベル運営まで一人でこなす才人、J-ZONEの名前を忘れないように。まあ、このEPを聴いた後では、忘れるはずも無いとは思うが。