J-ZONE “PIMPS DON’T PAY TAXES”

これまでのリリースで、地元ニューヨークのみならず世界中で着実に評価を高めてきたJ-ZONEのセカンド・アルバム。MCとしてだけでなく、プロデューサーとしてもプロップスを集めるJ-ZONEだが、この”PIMPS DON’T PAY TAXES”では、単なるビート・メイカーとしてではなく本当の意味でのプロデューサーとして類稀な才能を発揮している。

インタビュー形式で自らの事をライムする”Q & A”でJ-ZONEが何者か分かった後には、最高のエンターテイメントが待っている。その”Q & A”でもインタビュアーに迫っていたJ-ZONEの事だから、エロネタが多いのも当然。J-ZONEがゴムをどれだけ嫌いかライムした後、HUGGY扮する”サグ・ペニス”に付けろ付けろと言われる”THE TROJAN WAR”からして最高だが、ライヴの後に女をゲットしようとしてるのに自称”ファン”に邪魔をされる”BLOCK ITCH”、15才の女とヤッて捕まるまでの話”JAILBAIT JENNIFER”などなど、どれも笑える曲ばかりでドープ。

かといって女の事ばっかり考えてる訳でもなく、”THE BUM BITCH BALLAD”では男女問わずビッチはビッチだと斬って捨てる(牧歌的なトラックと’ビッチ’を連呼する声ネタとのギャップが良い)し、”NO CONSEQUENCES”では”本日は法執行機関が休みなので、何をしても捕まりません”みたいな役所からの伝言で始まる一日をライム、懐の深さを聴かせてくれる。

ラッパーとしても充分にドープなJ-ZONEだが、プロデューサーとしての彼も素晴らしい。ファンキーで奇妙なサンプリング・ネタ、タイトなドラム、全体の練られた構成、どれもが作品として完成された一級品。オリジナリティとクリエイテヴィティに溢れている。ベストは”METROCARD MILLIONAIRES”かな。アルバム中に散りばめられた爆笑モノのスキットの数々も、アルバムを一つの繋がった作品として聴かせる事に成功していて、一度再生ボタンを押したら最後まで聴いてしまう魅力がある。

J-ZONEは、このリリースでその評価を確かなモノにするだろう。ビートもライムもスキットもドープだが、何しろ曲順を含めた全体の構成が素晴らしく、アルバムらしいアルバムだ。彼のクルー、OLD MAID BILLIONAIRESのHUGGYとAL-SHIDを半数の曲にフィーチャー、サジ加減も絶妙、真のヒップホップ好きなら聞き逃しは許されないアルバムだ。