J-ZONE “SICK OF BEING RICH”

ニューヨークが誇るマルチ・アーティスト、J-ZONEのサード・アルバム。

実質的なオープニング・トラック”THE COMMANDMENTS”は、「バスケ見てる時は俺んちに電話するなかれ」などとルールを羅列するJ-ZONE版”TEN CRACK COMMANDMENTS”。以降、アルバムは相変わらず下らないユーモア満載。アジア系に対するステレオ・タイプ満載だが何故か怒る気のしない”HO KUNG FU”を筆頭に、”STEADY HOGGIN’”ではデブ女(「まるでBOO-YA TRIBEのメンバー」)、”TOO MANY BABIES”では子持ち女をコケにしまくる。J-ZONEがコケにするのは他人だけじゃなく、フェイク・ジュエリー賛歌”BLING AROUND THE COLLAR”に代表される自虐的ユーモア・センスが毒を上手く中和していて、バランス感覚も抜群だ。普通なら鬱陶しいだけのスキットも前作同様に効果的で、流石だ。

これまでは身内で固めていたゲストだが、本作では外部から著名人を招聘。彼への評価が確実に高まってきている事の現れだろう。一ファンとして、素直に嬉しい限りだ。MASTA ACEは今一つ乗り切れてない印象だが、西からJ-ROとKING Tが参加した”CHOIR PRACTICE”は素直に格好良い。

ビートは勿論J-ZONE。フォーミュラをしっかりと守りつつ、新鮮さをキープ。正にJ-ZONEにしか作れないビートだ。”HO KUNG FU”のオリエンタルなビートや、”WHIPLASH”のフルート・ループ、ハードな”CHOIR PRACTICE”辺りが特に良いが、捨て曲は無し。ドラム・プログラミングも意外と細かいし、ニューヨーク・サウンドの新たなスタンダードと言って良いんじゃないだろうか。ただただドープ!

基本的にやっている事は今までと変わらないのだが、決してマンネリに陥らない辺りに、彼の才能を感じさせる。かといって、馴れ合い的お約束でお茶を濁している訳でもない。このバランス感覚こそ、彼の真骨頂なんじゃないかと思う。