JAY-Z “THE BLUEPRINT 2: THE GIFT & THE CURSE”

ヒップホップでは、”ダブル・アルバムに良いモノはない”というのが定説になっている感があるが、個人的には違う意見を持っていて、2 PAC”ALL EYEZ ON ME”、THE NOTORIOUS B.I.G.”LIFE AFTER DEATH”、WU-TANG CLAN”WU-TANG FOREVER”、どれも傑作だと思っている。通して聴くべきアルバムと、シャッフルして聴くべきアルバムとがあるとすれば、後者の最高の形がダブル・アルバム。好きなアーティストの曲をたっぷり聴けるって言うのは、単純に良いものだ(値段が一枚分なら尚良し)。

一枚目の”THE GIFT”にはあまり良い曲がなく、ベスト・トラックがDR. DREの同名曲の焼き直し”THE WATCHER 2″では、少し寂しいだろう。最悪なのが”A DREAM”で、B.I.G.の”JUICY”のヴァースをそのまま持ってきて、更にFAITH EVANSにフックを歌わせるという、いくらなんでもこれは悪趣味過ぎるんじゃないのか。故人の未発表ヴァースを使って”フィーチャリング”とするのも嫌いだが、よりによってクラシック曲のヴァースを流用するとは。曲の出来云々以前の問題でしょ。THE NEPTUNES手掛けるプレイヤーモノ”EXCUSE ME MISS”や典型的TIMBALAND節が炸裂するクラブ・バンガー”WHAT THEY GONNA DO”、”俺は世界中で有名だぜ”とのたまう”ALL AROUND THE WORLD”などは悪くないが、”THE WATCHER 2″での素晴らしいマイク・リレーを聴いた後では…

逆に、2枚目の”THE CURSE”には良い曲が集まっている。クルー賛歌”DIAMOND IS FOREVER”に始まり、M.O.P.をフィーチャーしてオリジナルを超えた”YOU DON’T KNOW (REMIX)”、父と息子の皮肉な運命を綴った”MEET THE PARENTS”、成功と嫉妬についての葛藤をライムした”SOME PEOPLE HATE”、”女掴まえに来たんだから、ヤローどもは俺に話し掛けんなよ”って感じのユーモラスな”2 MANY HOES”、NASへのディス・トラック”BLUEPRINT 2″、ICE CUBEの”BITCH IS A BITCH”を下敷きに、ビッチとシスターの違いを羅列する”BITCHES AND SISTERS”まで、ピュア・ドープネス。

サウンドは、ソウルフルなKANYE WEST路線とクラブ向けのTIMBALAND/THE NEPTUNES路線が織り交ざった、JAY-Zのキャリアを総括するような内容だが、インパクトでも、クオリティでも、過去の仕事は越えていない。どれも悪くはないが、アルバムを代表するほどの楽曲は一つもないし、アウト・テイクのような雰囲気漂う中途半端さが目立っている。特に、TIMBALANDのトラックが全部同じに聴こえるんですけど。ウーン…

結局”THE BLUEPRINT 2″は、良くも悪くも彼のキャリアの中で最もJAY-Zというラップ・アーティストの本質が出ているアルバムになっていると思う。”‘03 BONNIE AND CLYDE”などを聴いては彼を嫌いになり、逆に”MEET THE PARENTS”などをを聴いては好きになるって感じ。でも、値段も安いし、良いんじゃない?