K-OTIX “UNIVERSAL”

普段からアナログ・シングルをこまめにチェックしているリスナーなら、MICとDAMIENの2MCに、DJ/プロデューサーのTHE AREによるK-OTIXと無縁ではないはずだ。数年前から印象的なシングルをリリースしてきた、テキサス州ヒューストン出身の3人組、遅すぎるデビューアルバムだ。

MICとDAMIENの2人は、非常にオーソドックスなスタイルながら、充分なスキルと存在感を持っている。トピック的には、ライヴ会場で最前列に陣取りながらもただ突っ立っているだけのオーディエンスに対する憤りをライムした”FRONT ROW”等の興味深い題材もあるものの、基本は自己紹介的な内容が多い。そんな中、最も耳を惹きつけられたのは、3つのパートに分けられた”MY LIFE”だろう。自らの人生とヒップホップとの関わりをライムしたこの曲は、多くのヒップホップ・ヘッズ達の共感を呼ぶのは間違いない、ヒップホップに対する真摯な愛情に満ちている。

THE AREのトラックも、ツボをおさえたモノが揃っている。サンプリング中心のシンプルな音作りで、新鮮さは無いが…どれも質は高い。中でも、美しいループに良いモノが多く、”TAKE MY LIFE.”や”LOOKING GLASS”、”LOVE SONG”辺りはその真骨頂だ。他にも、抑えた渋さが魅力の”LEGENDARY”や幻想的な”C.P.R.”、ファンキーな”MIND OVER MATTER”、ギターループが最高にキャッチーな”WORLD RENOWN”等で良い仕事をしているものの、ベスト・トラックはなんと言っても、3パートに分けられた”MY LIFE (ALTER EGO)”だろう。美しく透明感溢れるパート1、緊張感のあるパート2、ハードなパート3。ドープ!

トラック、ラップ共に新しさや実験的な所は無いが、非常に完成されたデビュー・アルバムと言えると思う。オーソドックスさを退屈と感じる人もいるかもしれないが、新しいだけがヒップホップじゃないよ、という事で。