KANKICK “FROM ARTZ UNKNOWN”

高校の時にMADLIBと出会い、その後LOOTPACKの第4のメンバーになったものの、脱退。DJ BABUらとグループを組んでいた事もあると言うトラック・メイカー、KANKICKのデビュー・アルバムだ。構成的には、ゲストを招いた曲とインストが半々ずつで、まあベタな感じではある。が、1曲1曲の完成度はとても高い。

まず、ゲストラッパーを招いた曲の中では、LOOTPACKのWILDCHILDとKOMBOをフィーチャーした”ON THE LOOKOUT”が気に入った。スムーズなギター・ループの上で2人のラップが心地よく流れてゆき、ドープの一言。ラッパーで選ぶなら、西海岸オールスターと言った感じの”DON’T FIGHT THAT”が目玉。トラックは地味目だが、こういったポッセ・カットにはこのぐらいが丁度良くて、ラップが映える。サビのスクラッチもいい感じで、トラック云々よりも、メンツの選び方を含めて、KANKICKのプロデューサーとしての手腕が光っている。KRONDONはやはり格好良いね、本当。他にも、ファンキーなパーティー・チューン”A SIGHT TO SORE EYES”、ひたすら気持ちいい”LOVE HARD CORE”、”DELETING PROGRAMS”辺りが聴きモノ。

やはりコチラがメインであろう、インスト曲に目を移すと、とにかく極上トラックが目白押しだ。”KANSTRUMENTAL”と題されたこれらのインスト曲群は、まるで夕方時の公園でベンチに腰を下ろして、子供達を眺めているかのような”KAN INTRO”を筆頭に、サンプリング・アートの極みを堪能させてくれる。メロウな”4″、”7″、勢いのある”9″、スローながら極めてファンキーな”12″、”13″、スペイシーなベスト・カット”15″、どれも、オレンジ色の街灯がともるL.A.の街をドライブしているような気持ちにさせる。”REBEL MUSIC”では、自らマイクを握っているが、これはご愛嬌。

全体的に、非常に心地よい、ソウルフルなアルバム。こじんまりとした印象もあるが、この完成度の前では、文句を言う気にならない、というのが正直な所だ。派手さはないが、全てのリスナーにお勧めだ。

因みに、彼はDECLAIMEのアルバムでMADLIBと共に約半数のプロデュースを手掛け、とても温かみのあるセンスのいいトラックを提供している。