KOOL G RAP & DJ POLO “LIVE AND LET DIE”

KOOL G RAPのサード・アルバムとなるこの”LIVE AND LET DIE”最大の話題は、西海岸のSIR JINXを全面的に起用した所だろう。このコラボレーションは大成功で、結果としてアルバムはKOOL G RAPの最高傑作となったと言ってよい。

ゴッドファーザーのテーマをイントロに持ってくるだけあって、アルバムの中心は、映画的なストーリーモノ。マフィアの金を横領し、国外に逃亡するまでの物語”ON THE RUN”、地下鉄での強盗から警察とのカーチェイスまでをワンヴァースで一気に語る”TRAIN ROBBERY”、精神病院から医者を殺して脱走した男が、殺人を繰り返しながら 「頼むから俺に拘束服を着せてくれ」と懇願する”STRAIGHT JACKET”、武装強盗で捕まった男がム所で正気を失っていく”EDGE OF INSANITY”辺りはG RAPの真骨頂、現場の匂いすら感じさせる見事なストーリーテリングが堪能できる。下手な映画よりも映像的、生々しいまでの凄まじい描写力。

KOOL G RAPのリリックの大半を占める壮絶な暴力描写に拒否反応を示すリスナーも多いだろう事は容易に想像できるが、彼のヴォーカル自体が持つ魅力を否定できるリスナーはいないだろう。女とやろうとする度に邪魔が入る”OPERATION CB”や 「証人保護制度ですら、俺のサラミは隠せないぜ」なんて言ってる”FUCK U MAN”みたいなセックス・ライムもユーモラス。なんにせよ、G RAPの魅力的な声、デリヴァリーは単純にMCとして一級品だ。ポッセカット”TWO TO THE HEAD”も強力で、SCARFACEの存在感は圧倒的だ。

当時絶頂期にあったSIR JINXの埃っぽいプロダクションは、KOOL G RAPのフロウが持つラフネスを補強しリリックの世界観を最高の形で演出していて、最早無敵と言っても良い程。まだエッジのある音を作っていた頃のTRACKMASTERZの手掛けた3曲も素晴らしい出来。中でも”ILL STREET BLUES”は、真のクラシック。

聴き終わる頃には、まるで何本もの映画を見た気分にさせてくれるアルバムだ。極上のラップに極上のビート。最高のヒップホップのアルバムに必要な要素は、全て出揃った。必聴。