LATYRX “THE ALBUM”

DJ SHADOW主催QUANNUMの前身レーベルSOULSIDESから、LYRICS BORNとLATEEFのデュオLATYRX。西海岸シーンの中でも異彩を放つ彼ら、このデビューアルバムには、そんな彼らの魅力が詰まっている。2人のラップは勿論、LYRICS BORNやDJ SHADOWのトラックも、このアルバムのファンク濃度を高めている。

彼らの魅力を手っ取り早く知るには、冒頭の”LATYRX”を聴いてみればいい。DJ SHADOWの手によるファンク・ビートに、2人のイレギュラーなラップ。なんと言ってもこのファースト・ヴァースだが、LATEEFとLYRICS BORNが左右で同時にラップする…!言葉に出来ない不思議な世界を構築していて、凄まじい。シンプルな”SAY THAT”に於いても、2人のラップは最高にドープだし、再びSHADOWがファンク・トラックを提供した”THE QUICKENING”も、2人が口を開くだけでイルなファンクネスが充満する。グッとレイドバックした”BALCONY BEACH”では、LYRICS BORN自身が手掛けるスムースなトラックに乗せてポエティックなライムを披露、唸らされる。だるーいデリヴァリーも、何ともオリジナル。

ファンキーこの上ない”AIM FOR THE FLICKERING FLAME”では、LYRICS BORNの歌うようなフロウの真骨頂が聴けるし、LATEEFの歯切れの良いラップとのコンビネーションも最高にドープだ。そのLATEEFは、BLACKALICIOUSのCHIEF XCELプロデュースのソロ”BAD NEWS”で”陰口なんて気にすんな”と歌う。生バンドによる”BURNT PRIDE”も、LYRICS BORNのヴォーカルが一つの楽器としてサウンドに溶け込んでいて、ファンキーこの上ない。BLACKALICIOUSが参加した”BURNING HOT IN CALI ON A SATURDAY NIGHT”は、彼らのルーツが如実に現れたオールドスクールなトラックでのマイクリレー。

LATEEFとLYRICS BORNのフリーキーでスキルフルなラップ、ファンクを基調としたトラック、全てが高水準。実験的でありながら、同時に普遍的な魅力も兼ね備えているという、ある意味理想的なバランスを保っているアルバムだ。とにかく、全曲がハイライトと言える。まだ聴いた事が無い、と言う人は焦った方が良い。