LMNO “LEAVE MY NAME OUT”

西海岸のクルーVISIONARIESから、LMNOがソロデビュー。地味な存在ながら活動を続ける彼らに、アメリカのヒップホップ・シーンの健全な一面を見る。特別革新的でもなく、キャラ立ちするタイプでもないが、サンプリングに拘り素朴な音楽を作り続ける彼らは、実に楽しそうである。

冒頭の”1ST THINGS FIRST”では、神やヒップホップへの思いをキック。ピアノループがドープなトラックを手掛けるのはKEY KOOL。彼は、ウッドベースが独特なラヴソング”NATURAL BEAUTY”でも質の高いトラックを提供している。EVIDENCEは”GRIN & BEAR IT”で、ミニマムながら奥行きのある音作りで新境地を開いている。”RADIANT”での弦楽器使いも実に上手く、自分のグループDILATED PEOPLEでの仕事以上に気合が入っている様だ。だが、最も印象的な仕事を残しているのは、SWOLLEN MEMBERSのROB THE VIKINGだ。アルバムのベスト”INVIGORATING”での幻想的なトラックは実に素晴らしい。が、”ALWAYS”でのストリングス使いはアベレージ。

音の話ばかりになったが、主役のLMNOのラップも悪くない。ライムの端々に登場する神への感謝の言葉から察するに、かなり信心深い人物のようだが。宗教の元に一つになれば争いは無くなる、といったメッセージが目立っている。他のトピックには、恋愛モノやサッカーMCモノ、ストーリーモノ等、極めて基本に忠実だ。

全体的に、小粒ではあるが良質のヒップホップ・アルバムだ。聴かなくても困らないけど、聴いても困らないよ。極端なアーティストもいいが、彼らのような真ん中に位置するアーテストもお忘れなく。