NETHERWORLDS “PALS”

既にある程度キャリアを積んでいるアーティストが、気軽にユニットを組んでしまうのがヒップホップの面白い所だが、このTHE NETHERWORLDSは、LIVING LEGENDSのなかでも随一の人気を誇るMURS、既に数枚のアルバムをリリースしているANACRON、そしてHIMSELFによるユニット。共にL.A.で育ったと言う彼らがある種のリユニオンを果たした訳だ。

このアルバムには、一貫してピースフルな空気が充満している。そんな中でも、”FUTURA”のピースフルな雰囲気は特筆モノ。最高にスムースなトラックは、ANACRONのベストの一つだろう。それぞれの理想を語るシットリとライムしたリリックも暖かく、ポジティヴィティに溢れている。HIMSELFはキング牧師の有名な”私には夢がある”演説を彷彿とさせるし、MURSは将来への個人的な希望を語っていて面白い。”LESSONS LEARNED”では、様々な失敗が人を成長させると言うメッセージが完璧なトラックによって完成されていて、終わり近くの女性ヴォーカルも幻想的で最高に平和な気分にさせてくれる。

愛について歌った曲が多い事が、このアルバムをより暖かく感傷的にしている。最も心に響くのは”ABANDONED (NO LOVE)”。タイトル通り裏切りや拒絶について、友人や恋人、家族などを失う事の辛さをライム。他にも、彼らの地元カリフォルニアへの愛(”CALI (SOULED OUT)”)、色々な状況への愛(”A LOVE BALLAD”)、女優のクリスティーナ・リッチに対する愛(”COME BACK HOME”)、このアルバムを象徴するかのような友人への愛(”PALS”)など、何と言っても愛がある。

ビートはどれもドープ。あえて幾つか選ぶとすれば、殆どの曲を手掛けたANACRONの”FUTURA”、”LESSONS LEARNED”、JUSTIN TEWNの”SONUVAGUNS”、MOLEMENのPNSによる”A LOVE BALLAD”辺りか。どれも独特の透明感を持っていて、最高だ。

ANACRONが中心的な役割を果たしているものの、このアルバムには3人の魅力が最高の形で現れている。ソロ曲も良いが、やはり3人揃った時は、特別な何かがある。それに、ココまで暖かいヒップホップ・アルバムも珍しい。人に優しくさせる一枚だ。