NON PHIXION “THE FUTURE IS NOW”

ILL BILL、SABAC RED、GORETEX、DJ ECLIPSEによるブルックリン発NON PHIXION。MATADORやWARNERとの契約も何故か流れ、完成済みだったデビュー・アルバムが遂に正式にリリースされた。確かにタイミングは逃したが、彼らのファン(筆者も含む)はそんな事気にするはずも無く、リリースされた事だけでも喜ばしい。

リリック的には、彼らのトレードマークとも言える(”I SHOT REAGAN”憶えてる?)政府の陰謀、暗殺、9.11のテロから女ネタまで、幅広いと言えば幅広い。3MCの中では、やはりILL BILLが一番印象的なパフォーマンスを残しているが、GORETEXとSABAC REDもタイトなマイクスキルでサポート。ILL BILLのソロ”CULT LEADER”から推察するに、グループのコンセプト面は彼がイニシアチヴを取っているのだろう。FBIだのCIAだのと言った世界観に付いて来れるかが勝負ドコロだが、PETE ROCKによる”IF YOU GOT LOVE”では”愛は殺せない”なんて歯の浮くような一節を吐くという離れ業をやってのける。サビは駄洒落以下だね。ドープ!

プロダクション面だが、大半の曲を手掛けるのはILL BILLの実の兄弟NECRO。既にクラシックの”BLACK HELICOPTERS”での演歌な変態プロダクションは例外としても、”FUTURAMA”でのストリングス使いに代表される映画的なプロダクションでNON PHIXIONの妄想的な世界観を演出、”THE CIA IS TRYING TO KILL ME”などはその典型だが、”SAY GOODBYE TO YESTERDAY”では女性ヴォーカルをフィーチャー、スムースなトラックで和ませるなど、意外に器用だ。前述のPETE ROCKやDJ PREMIER手掛ける成り上がりチューン”ROCK STARS”も強力だし、LARGE PROFESSORの”WE ARE THE FUTURE”には彼の最盛期のドラムが戻っている。

正に予想通りのアルバムに仕上がっていて、そこが強みでもあり弱みでもある。少し物足りなさを感じる向きもあるだろうが、取り敢えずドープな曲が揃っている。とにかくMC陣が圧倒的な存在感。”CULT LEADER”とは言い得て妙だ。