PBS “UPSIDEDOWN”

サンフランシスコを代表するSUNSET LEAGUESのリリシストMERCURYとLAZERUS JACKSONによるユニット、PBSのデビューアルバム。

脱力フロウがクセになるMERCURYと、小回りの効くLAZERUS JACKSONのコンビネーションは最高で、確かなスキルでラップそのもののノーギミックな格好よさを聴かせてくれる。このアルバムで2人は、社会のあらゆる不正や悪、不平等に対し牙を剥いている。ありきたりと思うなかれ。彼らは、言葉遊び的要素も含めて余裕を見せる”UPSIDEDOWN”を皮切りに、政府の陰謀を追及する”PLOTSSCAMSANDSCEMES”、宗教に疑問を呈する”GODEATGOD”、いつになくアグレッシヴなフロウで戦争についてライムする”BOMBIN’”、シンボルを盲目的に崇拝する事の危険性を歌った”SYMBOLISM”まで、独特の視点とヴォキャブラリーで、目新しさのない題材を面白く聴かせる事に成功している。”AIRBORN”でのヘイター達への辛辣なメッセージやポッセカット”PURE BLUNT SMOKE”なども、良いアクセントになっている。

SUNSET LEAGUESお抱えのプロデューサー陣が担当したサウンドは、特筆すべき点はないものの、確かなサンプル・ネタ選びとこもったビートはラップが最高に映える出来で、2人のMCの良い所をわきまえている感じだ。

サウンド面でもライム面でも、バランスの良い好アルバムに仕上がった。革新性や派手さはないが、確かなスキルをじっくりと堪能できる。