PEOPLE UNDER THE STAIRS “THE NEXT STEP”

西海岸のヒップホップには、他の都市のそれにはない底抜けの明るさのようなモノがある。HIEROクルー、PHARCYDE、UGLY DUCKLING、JURASSIC 5しかり。そして、このTHES ONEとDOUBLE Kの2人組PEOPLE UNDER THE STAIRSも例外ではない。ジャズ/ファンクを基調にしたトラックもさることながら、ユーモラスなライムもそういった伝統を踏まえているかのよう。デビューアルバムだ。

オーソドックスなデリヴァリーの2人のラップだが、ヒップホップ賛歌からユーモラスなストーリーテリング、パーティーモノまで、身軽だ。とはいえ、このアルバムの主役はやはり、ほぼ全曲をTHES ONEが手掛けたサウンドだ。一言で言うと、最初から最後までとにかくジャジー。哀愁漂うダークな”DEATH OF A SALESMAN”やホーンが良い”HARDCORE”、レアグルーヴ感の強い”WANNABES”、どれも良いが、メロウなジャズ・ギターが心地良い”MID-CITY FIESTA”での中盤のネタの重ね方や、同じくギターが印象的な”SAN FRANCISCO KNIGHTS”でのヴォーカルサンプルの使い方、”TIME TO ROCK OUR SHIT”の終盤の展開などは、効果的で唸らされる。他にも、”THE NEXT STEP Ⅱ”は正しくファンキーだし、”ASSHOLE”の荒々しいドラムやファニーな”PLAY IT AGAIN”なども捨てがたい。特にエレクトロニックな”D.A.R.E.”での、ラスト一分に登場するキーボードは筆舌にしがたいドープさがある。

特別個性的である訳ではないのだが各曲の質は極めて高く、個人的にはとても好印象。彼らの音楽には、確かなグルーヴがある。的を得たライムに練られたループ展開、無意識に首が動いてしまうドラムブレイクの数々。ヒップホップの楽しさを忘れないためにも、彼らのような存在は貴重だ。