SABAC “SABACOLYPSE : A CHANGE GON’ COME”

ILL BILLに続いて、NON PHIXIONからSABACのソロ・デビュー作。

エイズ人工説を説く”THE SCIENTIST”、JFK暗殺からビッグフットまで、典型的なNON PHIXION節が炸裂する”UNSOLVED MYSTERIES”などはいかにもといった趣だが、このアルバムの真価はそこにはない。アルバムタイトルや曲名を見れば分かるように、徹底して政治的な楽曲が並んでいて、それがこのアルバムを特別なモノにしている。ボブ・マーリーを引用したプロテスト・ソング”PROTEST MUSIC”を筆頭に、あらゆる人間に団結を訴える”ORGANIZE”、曲名が全てを物語る”A CHANGE GON’ COME”、理想郷を語る”I HAVE A DREAM”まで、警察権力の暴力を告発する”FIGHT UNTIL THE END”に客演するIMMORTAL TECHNIQUEのアルバムに近い感触だ。SABACのアグレッシブなフロウも魅力的だし、シリアスなメッセージも彼ら特有のキャラクターによって上手くエンターテイメントに昇華されている。

このアルバムのもう1人の主役は、全曲を手掛けるNECROだ。最近再び大量生産モードに入った感のあるNECROだが、ILL BILLのアルバムよりも本作での仕事振りには、彼の才能を再認識させられた。独特の劇画的ニューヨーク・サウンドはそのままに、”PROTEST MUSIC”のような新機軸にも挑戦していて、それが非常に効果的。本作はNECROにとって最高傑作と言って良いだろう。

NON PHIXIONのなかではどうしてもILL BILLの陰に隠れがちなSABACだが、ソロ作の出来ではSABACの方が上だ。NON PHIXION色はそのままに、自らのオリジナリティーを出している。さて、最後の男GORETXがどう出るのか、楽しみになってきた。