SOLE “LIVE FROM ROME”

ANTICONのSOLEが発表したソロ3作目。「おたくラッパー」と散々けなされてきたことにもお構いなく、自己流を貫いている。彼の皮肉さは影を潜めることなく、相変わらずの怒りに満ちたフロウが健在だ。「絶対忘れるな・・9月・・25日・・俺の誕生日を」、「ツインタワーが崩壊した時、悲しいけど少しニヤけてしまわなかったか?」などの挑発的な言葉が満載なところを考えると、本人がスペインに移住したことはさほど驚きでない。”ATHEIST JIHAD”では、「頭を剃って、肌の色を染めて、このナンセンスな国を出て行くぜ/おっと、もう脱出したんだった」と叫んでいる。

以前までのSOLEからは、過激なリリックをまるで隠すかのように、意味がほとんど分からない変態的なフロウでごまかしている印象を受けることが時々あった(”TOKYO”という曲で日本の都会の病みっぷりを叩いてた時もそうだった)。”LIVE FROM ROME”はその点で比較すると、彼が吐き出すライムに小細工が少なくなったことを感じさせてくれる良作だ。

プロダクションの方では、やはり前評判の高かったODD NOSDAMのトラックがひときわ異彩を放っている。一つ一つの音は軽い音だったりするが、スネアの潰れた感触といい、音を積層させて彼が生み出すインダストリアルな雰囲気のビートはかなり独創的だ。”SIN CARNE”、”BANKS OF MARBLE”、”DUMB THIS DOWN”などの曲を一度聴けば、彼の個性を確認することが出来る。今回ODD NOSDAMと並ぶ量のプロダクションをこなしたALIASも、曲の構成力しかり、気が付くとドラムンベースに変化している複雑なドラミングなどがタイトだが、ODD NOSDAMと比べると少し地味な印象を受けた。ただ、宇宙を旅しているかのようなムードの”SELF INFLICTED WOUNDS”や、水中から這い上がってくるかのように聴こえるボーカルエフェクトで始まる”EVERY SINGLE ONE OF US”などは、聴く度に深みが増すタイプの曲だと思う。

最後の締め2曲は、アルバムのハイライトだと言えるだろう。ラップを惹きたてるシンプルなアコギのループが繰り返される、”THEME”には文字通りアルバムのテーマが集約されており、単なる菜食主義の曲ではない。現代アメリカ社会が向かっている方向の異常さを批判するSOLEのリリックが冴え渡っている。それも、アルバムタイトルの言葉”ROME”で最後まで韻を踏むというオマケ付き。これは、「SOLEは韻を踏まない」という批判に対する回答のような気がしてならない。トラックを提供したMATTも、1曲だけの参加ながらいい仕事をしている。

フィナーレを飾るのは”DRIVE BY DETOURNMENT”。「永遠に続く『現在』に迷い込んでしまった」と始まり、「空気以外の全てが俺の敵にまわってる/俺に辿りつきたくても、俺はへその緒100万本くらい離れた場所にいるぜ/俺にはざっと星5万個分ぐらいのスペースが必要だ」と悲観的に叫ぶ様は、シンセのメロディーと見事に合っている。最後に、SOLEの声が倍速になってチョップされるところは、まるで逃げ続けるSOLEの消息が途絶えてゆくみたいだ。

“LIVE FROM ROME”は、今までSOLEがリリースした中では、ベストアルバムと言えるだろう。少なくともリリックの完成度、そしてプロダクションを担当した仲間の貢献度を考えると。

(Ais Duke)