TALIB KUWELI “QUALITY”

もはや方向性を完全に見失った感のあるRAWKUSだが、このTALIB KWELIのソロ・プロジェクトは唯一の望み。最後の牙城と言って良い。

ギターもノイジーな”RUSH”、KANYE WESTが賛美歌のようなトラックで迎え撃つ”GET BY”、ラガ風味の”GUN MUSIC”と、出だしは好調だ。TALIB KWELIのフレキシブルなデリヴァリーも冴え渡っているが、中盤に向って徐々に雲行きが怪しくなってくる。MOS DEFとの”JOY”にかつてのマジックはないし、ポッセ・カット”GUERRILLA MONSOON RAP”も凡庸な仕上がり。”WAITIN’ FOR THE DJ”や”PUT IT IN THE AIR”といった、所謂クラブ・チューンはチグハグな印象を拭えない。

そういった意味でも、メロディアスな曲が続く後半の流れは素晴らしい。オクラホマの事件、大統領選、そして9.11に至るアメリカの偽善を突く”THE PROUD”から、甘酸っぱいラヴ・ソング”WON’T YOU STAY”まで、TALIB KWELIの時に呟くように、時にアグレッシヴにと変化する語り口と、ソウルフルなヴォーカリスト達との絡みは、アルバム最大の聴き所だ。特に、彼ら周辺の作品でお馴染みの女性ヴォーカリスト、VINIA MOJICAがセカンド・ヴァースを任された”STAND TO THE SIDE”は良い。THE SOULQUARIANSによる”TALK TO YOU (LIL’ DARLIN’)”よりも、ヒップホップとスポークン・ワードの要素を一曲の中で自然に溶け込ませる事に成功している。

HI-TEKとのコンビネーションでは成しえなかった事が何か成されているかと言えば、答えはノーだが、BLACKSTARからREFLECTION ETERNALへの流れの中で築かれたフォーミュラを、自然な形でスケールアップさせている。極めて順当なソロ・アルバム。