TONEDEFF “HYPHEN EP”

幾つかのシングルやフィーチャリングで名を馳せたニューヨークのMC、TONEDEFFによる、コンピ収録曲やら、フリースタイルやらを集めたアウトテイク集。

彼の魅力はその流れる様なフロウだ。ポップ・チャートでも大ヒットしそうな”SPANISH SONG”や”MOVE IN,RIDE OUT”のような曲を、ココまで聴かせるのは意外に難しいものだ。特に、いわゆるバウンスモノの”MOVE IN,RIDE OUT”はドープで、とにかくキャッチーなサビに、最高のデリヴァリーを聴かせていて、メインストリームでも成功する可能性を垣間見れる。これを聴いても体が動かない人は、医者に見てもらったほうが良い。かと思えば、TONEDEFF自身がプロデュースした”FAST”では、完全に歌っていて(しかも上手い)、ドラムンベース調のスペイシーなトラックと併せて、前に挙げた2曲とは正反対の世界を作り出していて興味深い。とんでもなく場違いな曲であるのも確かだが。

他の曲ではストレートにライムスキルを披露していて、シンプルなトラックでのバトル・ライム”BATTLE RHYME HOOKERS”、フリースタイル”MIXTAPE MEDLEY”、ストリングスがドープな”THE BOOK OF THE DEAD”などなど、タイトなライミングにパンチライン、ドープ。

だが、その幅の広さ自体が弱点でもあって、彼の方向性、オリジナリティを不明瞭なものにしてしまっているのも確かだ。アーティストはよく、”名刺代わり”というが、このデビュー作は正にそれだ。まだ彼の全体像は見えないが、その辺はアルバムに期待したい。”MOVE IN RIDE OUT”で聴けるキャッチーさと “FAST”に顕著なプロダクション・スキルが同じ方向で一つになれば、興味深い。

余談だが、このCDはエンハンストになっていて、パフォーマンスの模様や仲間たちとのホームヴィデオ、オーディオ、リリック集なんかが入っていて、楽しめる。JUGGAKNOTSのBREEZLY BRUINもチョットでてます。