TYPICAL CATS “TYPICAL CATS”

シカゴから、QWEL、QWAZAAR、DENIZON KANE、DJ NATURALによるTYPICAL CATS。OFFWHYTEやPUGSLEE ATOMS等の才能を抱えるGALAPAGOS 4からのデビュー・アルバムは、シカゴ・シーンの底知れぬ可能性を示している。

3人が、これが誰のためのどんなアルバムであるかを語る”INTRO”に続く、ヒップホップを変えてみせるという”REINVENTING THE WHEEL”を聞けば、彼らがどんな目的をもった集団であるかは明確だ。一言で言うと、欺瞞に満ちたリリックはやめて本物で勝負しろという感じで、アルバムを聞き終わる頃には、それがハッタリでない事が分かるだろう。

3人のコンビネイションの良さは当然だが、個人的にはそれぞれのソロ曲が興味深かった。まずQWELだが、ピアノがスムースな”QWELOQUIALLISMS”、グラフ・シーンについてライムする”THE MANHATTAN PROJECT”(ドープ!)、バトルモノ”CLICHE”、どれも最高の出来。DENIZON KANEはと言えば、スムースなピアノが良い”SNAKE OLI”、ほぼビートレスのジャジーなピアノに合わせてパフォーマーとしての孤独感を語る”LIVE FOREVER”、ポエトリー・アーティストでもある彼らしくアカペラでのポエトリー・リーディングで始まる”WHAT YOU THOUGHT HOPS”、どれも彼の多彩なフロウが冴えまくる。一曲のみのQWAZAARだが、バトル・ライム”IT WON’T STOP”はロウな魅力に溢れている。

3人が集った曲では、ワックMCを斬る”TAKE A NUMBER”や、ラジオ局へ向う道中をライムした”THIN RED LINE”(DENIZON KANEのレゲエの影響を強く感じるフロウがドープ)など、当然のように相性は良い。DJ NATURALは、味なスクラッチを披露する”NATURAL CAUSES”、曲名が全てを物語るインスト・トラック”TOO HAPPY FOR QWEL”で存在をアピール。

大体、グループ名からして皮肉が利いている。トラックの弱さが唯一の弱点だが、3人のMCは皆ドープで、その弱点をカバーしている。ソロ曲が多く収められている事からも、彼らがソロ活動を念頭に於いているのは明白で、楽しみな限りだ。