VIRTUOSO “WORLD WAR ONE: THE VOICE OF REASON”

VIRTUOSOの名は、ボストン・ヒップホップを追いかけている人には当然馴染みの名前だろう。これまで、ARMY OF PHARAOHやREBEL ALLIANCEといったグループの一員として以外にも、同郷の7L & ESOTERICのアルバムへの参加等で名を馳せてきた新進気鋭のMCだ。このデビューアルバムでは、多くのボストンのアーティストをゲスト/プロダクションに迎えて結束の固さを見せているだけでなく、DELやCASUAL、PANIKといった外部のアーティストともコラボレーションする事で、自らのスタイルに幅を持たせる事に成功しているように思う。

彼のヴォーカル/ライム・スタイルには、ハードなトラックが良く似合う。軽い自己紹介”I’M VIRTUOSO”を始め、”SHOW RESPECT”や”SMASH TA PIECE THEATER”など、タイトなバトル・ライムがトラックとマッチしていてドープだ。ストリートの現状を描いた哀愁漂う”GUARANTEED”や、PANIKの手による美しいストリングスに乗せてドラッグにまつわる悲劇をライムする”OMNIPOTENCE”では、使い古された題材ながら優れたストーリーテリングの才能を聴かせていて、唸らされる。そんな中、女性ヴォーカルをフィーチャーした”ONE”や”REMEMBER”は、アルバムに良いアクセントを与えている。特に、彼の両親、まだ見ぬ子供、そして友人に捧げた”REMEMBER”はトラックと併せて素晴らしい出来。

ゲスト参加曲も良いモノが揃っている。DELとCASUALの”ALL WE KNOW”は、サビが全てを台無しにしている気もするが、3人は絶好調。当然、ボストン勢も元気で、T-RUCKUSとJEDI MIND TRICKSが参加したハードな”BEATDOWN”、REKSとの”PROVOKE ME”も良いが、”ORION’S BELT”のESOTERICとMR LIFによる力の入ったパフォーマンスは一つのハイライトだ。

VIRTUOSOはドープなMCだ。魅力的な声とデリヴァリー、ライムを兼ね備えている。しかしながら、何曲かの弱いビートと、あまりにワックなパーティーチューン”WANT ME”がアルバムの総合性、質を貶めているのが勿体無い限り。彼には、自分のライム・スタイルに合ったビート選びをする事が今後の課題だろう。