ABSTRACT RUDE & TRIBE UNIQUE “P.A.I.N.T.”

西海岸シーンの重鎮、AB RUDEの4枚目は、カナダのBATTLE AXEから。MIKAH 9、ACEYALONEとのユニットHAIKU D’ETATや、ACEYALONEとのデュオA TEAM、最近ではSWOLEN MEMBERSのPREVAIL、MOKA ONLYと組んだCODE NAME SCORPION等のサイド・プロジェクトを経て、その評価を揺るぎない物にした後のアルバムだけに期待も大きいが、そんな周囲の期待を知ってか知らずか、非常にリラックスしたアルバムになっている。

今までのアルバムとの最大の違いは、数多くの曲にゲストが参加している点だ。中でも、タイトルが全てを物語る”HEAVYWEIGHTS ROUND 4″と、お馴染みのメンツにSLUG、EYEDEAの2人が加わった”FRISBEE”の2曲が目玉だろう。前者は、9分近い所謂チキチキ・ビートでこのクラシック・シリーズに新たな1ページを加えている。後者ではやはり、SLUGとEYEDEAに耳が行くが、特にEYEDEAが頑張っている。他には、LL CREWからGROUCHとELIGHが参加した”DAWNING OF THE AGE”では、シーンを代表する3人が達者なマイク・リレーを聴かせてくれる。

しかし、個人的には、MOKA ONLYをフィーチャーした男女間の軋轢の物語”SHE’S ALWAYS RIGHT”、サビのスクラッチがいい感じの自己顕示モノ”SUN SETS ON EM”、カリフォルニアのストリートを描いた”KILLAFORNIA TO THE BELLY”の3曲が特に気に入った。トラック、ライムともに素晴らしい仕上がり。”FULL TIME JOB”での女性ヴォーカルの使い方もとても上手く、SLYの”FAMILY AFFAIR”をそのまま使用した同名曲も、嫌味にならない感じでドープ。意識の高いポジティヴなリリックが大半を占める中、”STOP BITING”では曲名どうり、スタイルを真似する連中を徹底的にディスっていて、MCとしての格の違いを見せ付けている。トラック面では、FAT JACKが意地を見せている。彼の最近の作風はあまり好きでなかったのだが、ここでは充実した仕事振りを聴かせてくれる。

全体的に余裕の高水準で、王道西海岸サウンドの最高峰がココにある。ABSTRACT RUDEはこのアルバムで、今風の感触を取り入れつつ、唯一無二のオリジナリティーを保っている。