AESOP ROCK “APPLESEED”

統一感のない寄せ集めだった前作と違い、このEP”APPLESEED”はキチンと作られていて、AESOP ROCKの世界観が初めて堪能できるモノになっている。AESOP ROCKの詞は、明確なテーマなどをライムするのではなく、ある種解釈はリスナー任せというか、独特の世界観をそのライムで構築していく。そのインパクトのある声に、完全にオリジナルなデリヴァリー。EPとはいえ、これを聴けば彼がこれからのシーンを牽引する存在になるだろう事は、誰の目にも明らかだろう。

ヒューマン・ビートボックスやハンドクラップに乗せたイントロに続いて、レイドバックしたベース・ラインに絡むホーンがドープな”DRY SPELL”、ブルージーなギターの”SAME SPACE”ファンキーなトラックが、徐々に緊張感を増してゆく”SICK FRIEND”、唯一アップテンポな”1000 DEATHS”、マッドなホーンに持っていかれる”HOLD THE CUP”、 “BLUE IN THE FACE”は極めて無国籍なトラックが有無を言わせぬ程ドープだ。そして、ANTICONからDOSE ONEが参加した”ODESSA”。淀んだトラック(このベースライン!)を、DOSEの病んだデリヴァリーがさらに淀ませていて、とにかくマッドな世界が繰り広げられる。2人のコンストラストも完璧な、この曲がベスト・トラック。

イントロを入れてたった8曲32分というヴォリュームながら、中身はとにかく濃い。トラックも含め、完全に自分の世界を確立したといえる。全編を通して統一感が貫かれているが、ヴァラエティにも富んでいる。AESOP ROCKとBLOCKHEADの基本的なスタイルが、ココに詰まっていて、必聴だ。ドープ。