AESOP ROCK “MUSIC FOR EARTHWORM”

ニューヨークはロングアイランド出身の屈折したリリシスト、AESOP ROCK。人知れず活動していた彼の作品を集めたのがこの”MUSIC FOR EARTHWORM”。天才は忘れた頃にやって来るもので、新たなスターの誕生を予感させる。

まずは”SHERE KHAN”を聴いて欲しい。THE CONTROLSというPORTISHEAD的なグループの曲にAESOPが参加したものだが、女性ヴォーカルとの絡み、とにかくドープなトラック、AESOP ROCKのラップが一体となり、ただただ素晴らしいの一言だ。次点は冒頭の”ABANDON ALL HOPE”。ダークなトラックがドープで、使い古されたブレイクも新鮮に聞かせてくれる。幻想的な”TROUBLED WATERS”も合格点だ。そして、”LIVE ON 89.9FM NIGHTTRAIN”はラジオでのフリースタイルの抜粋。彼がただのリリシストではなく、優れたパフォーマーである事が分かる。それ以外の曲は、どれもトラックが魅力のないものばかりで、リモコンのスキップ・ボタンの方が魅力的ですらある。

アルバムとして作られたものでない事を考えれば当たり前なのだが、全体的に統一感がなく、散漫。しかし、先に挙げた何曲かは恐ろしくドープで、すでに強烈な独創性を放っている。何しろ、その声とデリヴァリーが圧巻。一度聴いたら最後、虜になる事は保障する。いいトラックに恵まれさえすれば…という願いはすぐに叶う事になるのだが。