AESOP ROCK “LABOR DAYS”

AESOP ROCKがDEF JUXからニューアルバムを出す、と聞いた時は、あそこほどピッタリなレーベルはない、というのと同時に、やっと彼の作品がまともに配給される、と喜んだ人も多いと思う。期待されたEL Pとのコラボレーションこそ実現しなかったが、そんな事は問題ではない。期待に充分過ぎるほど答えてくれる、素晴らしいアルバムだ。

とりあえず、まずは”DAYLIGHT”を聴いて欲しい。 とにかくソウルフルなトラックが素晴らしく、この一曲でこのアルバムが前作”FLOAT”以上の出来である事を確信するだろう。「人生はビッチじゃない/人生は美しい女性だ/ お前らはアソコをなめさせてもらえないからそう呼んでるだけだろ」、ドープ!一人の女性画家の人生を通して、夢を見ることと生きる事の違いを歌った”NO REGRETS”では、いつもの散文的なスタイルを横に置き、明確でシンプルな物語も難無くこなして見せる。OMEGA ONEのプロデュースによるファースト・シングル”COMA”は、前作の”SKIP TOWN”同様、レゲエの香り漂うトラック。AESOP自身がプロデースした2曲、ホーンがドープな”BATTERY”、ダークな”BOOMBOX”は、ライム・スキルだけではなく、プロダクション・スキルも向上している事を証明している。前半のハイライトが”DAYLIGHT”なら、後半は”9-5ERS ANTHEM”に決まりだ。走るドラム上に、毎日の退屈な仕事のストレスについてのライムが乗った極上の一品。自らの所有物をひけらかしてばかりの様な、空しいラッパーに聞かせたいね、ホント。前作”FLOAT”でも、的を得たゲスト参加が効果的だったが、このアルバムも例外ではない。ILLOGICがスムーズに登場する”ONE BRICK”、C RAYZ WALZが参加した”BENT LIFE”、どちらもドープの一言だ。

音の面も強力だ。BLOCKHEADのプロダクションは、相変わらずの世界観を推し進めてはいるが、前述の”9-5ERS ANTHEM”、”DAYLIGHT”等で新境地を聴かせてくれる。それに加え、2人の相性の良さも特筆モノで、BLOCKHEADのビート無くしてAESOPの世界は完成しない、と言い切ってしまいたくなる。

結果的に、トラック、リリック、デリヴァリー、アートワーク、全てにおいてずば抜けた完成度を誇るアルバムとなった。駄曲/捨て曲は一切ナシ、なんと言っても、クラシックに相応しい風格を備えている。それに、”FLOAT”のマイナス点の一つだった音質も格段によくなった。これこそ正に必聴のアルバム。これを聴かずに何を聴く、という事だ。