ATOMS FAMILY “THE PREQUEL”

ATOMS FAMILYは、MCのVAST AIR、VORDUL、CRYPTIC ONE、ALASKA、WINDNBLEEZE、KASM、プロデューサーのDJ CHIPS、JEST ONEで構成されるニューヨークのクルー。これはコンピ収録曲に新曲、リミックスを加えたアルバムだ。

ATOMS FAMって誰?という人は、まずクルー総出の”ATOMS ALL STARS”を聴いて欲しい。ダークでシンプルな、”引き”のトラック上でのマイクリレー。全員がタイトなライム・スキルを披露していて、彼らにとっての”PROTECT YA NECK”的な一曲だ。全く隙無し、文句無し。ドープ!女性ラッパーETERNIAが参加した”RHYMING FOR DUMMIES”は、7分を越す長丁場ながら、CRYPTIC ONEによるドープなビートがその長さを感じさせない出来。アグレッシブな”NOT FOR PROMOTIONAL USE”もドープ。CANNIBAL OXのVASTとVORDULのタイトなコンビネイションに、CRYPTICがマイクと音でサポート。

ソロ曲に話を移そう。個人的な一押しは、ALASKAの”WHO AM I?”。とにかくドープな、叩きつけるようなドラムに、ALASKAが息継ぎの全くないようなラピッド・フロウで言葉を撒き散らしてゆく。リミックスよりもオリジナルの方がライムが映えていてドープ。次は、そのALASKAとHANGER18というユニットを組んでいるWINDNBREEZEの”NOTHING REALLY HAPPENS (PIANO MIX)”だ。その名の通りピアノ・ループ上で、淡々としながら凄みのあるデリヴァリーを聴かせるWINDNBREEZEは、そのリリカル・スキルでCAN OXの2人に引けを取らない存在感を出している。そのVAST AIRはと言えば、”ADVERSITY STRIKES”(両ヴァージョン共に良い)において、声やデリヴァリー、リリックなどの面でやはり、他のメンバーを圧倒している。ポッセカットにおいても、彼が登場するとガラっと雰囲気が変わる程。

プロダクションの大半を手掛けるCRYPTIC ONEの手腕も特筆に価する。”ATOMS ALL STARS”でのラップを立てた音作り、”WHO AM I?”での激しいドラム、”RHYMING FOR DUMMIES”でのベースと鐘の様なネタ使い等、いわゆるダークな肌触りながら、そのオリジナリティ溢れるトラック群に唸らされる。

色々なコンピレイションからの曲を収録しているものの、散漫さは全くない。まるで練って作られたかの様な統一感が充満するこのアルバムは、COMPANY FLOW亡き後のニューヨークを背負って立つであろう彼らのポテンシャルの高さを証明している。ニューヨーク最強のクルーとして、これからも我々の耳を楽しませ続けてくれる事だろう。これからの活動から目が離せない。