RJD2 “DEADRINGER”

盟友COPYWRITEを招いたDEF JUXからのデビュー・シングル”JUNE”は、RJD2から”MHZのDJ”という冠を拭い去っただけでなく、彼の名を一躍要注目プロデューサーへと押し上げた。マッシヴなドラム・プログラミング、見事な構成力、折り重なる素晴らしいサンプリング・ループ、全てが完璧といっても言い過ぎではないその”JUNE”からだいぶ待たされたが、ついにアルバムが届いた。”DEAD RINGER”、インスタント・クラシックだ。

なんと言っても”JUNE”だ。シンプルな始まりながら、COPYWRITEのファーストヴァースが終わると同時にガッと広がりを見せる展開が素晴らしく、それまでどちらかというとラップを立てていたRJD2だが、この曲で自身のスタイルを完全に確立したと言って良い。勿論、その前にはDEF JUXお披露目コンピ第一弾にも収録された”SILVER FOX”があった訳だが、”JUNE”の衝撃には敵わない。彼のトラックの特徴は、独特のラフなドラム、ストーリーすら感じさせる展開の上手さ、ブルージーでファンキーなサンプルを重ねる事によって生まれるエモーショナルなグルーヴだ。同時にフューチャリスティックな趣も感じられて、タイトル通りダリオ・アルジェント(というかゴブリン)風のシンセが喧しい”THE HORROR”や独特の浮遊感を漂わせる”THE PROXY”が、ド級のファンク・チューン”GOOD TIMES ROLL PART2″などと見事に調和している辺りは、RJD2らしいと言うべきか。凄まじいドラム・プログラミングに関しては、”THE CHICKEN-BONE CIRCUIT”一曲が全てを語っているし、”SMOKE & MIRRORS”や”TWO MORE DEAD”、”WORK”でのヴォーカル・サンプルの使い方にも唸らされる。

ラップ・トラックに関しては、やはり”JUNE”以上のモノはなかったが、BLUEPRINTとRJD2のユニットSOUL POSITIONの前哨戦”FINAL FRONTIER”での2人の相性の良さは格別だし、JAKKIは相変わらず口が悪い。

インストゥルメンタル・ヒップホップなんてもう目新しくはないが、サンプリング・ミュージックの真髄を極めたアーティストは数えるほど。ヒップホップの定義が現在ほど曖昧になった事はかつてないが、そんな時代にシーンのど真ん中から彼の様な存在が登場した事自体が、ヒップホップが本来持っている独創性や自由の証明に他ならない。ピュア・ヒップホップ、そしてピュアクラシック。全ての音楽好きに。