RUBBEROOM “ARCHITECHNOLOGY”

シカゴ・ヒップホップというと、トラディショナルなサウンドが思い浮かぶ。COMMONやALL NATURAL等もそうだが、非常にソウルフルだったり、ジャズ・サンプルの多用だったり、落ち着いた大人な雰囲気を感じさせるヒップホップ。そんな静寂を完全に粉々にしたのが、MCのMETA MOとLUMBA、ISLE OF WEIGHTとFANUMによるプロダクションチームTHE OPUS、そしてDJ STIZOで構成されるRUBBEROOMだ。

このアルバムは、最大の特徴でもある近未来/退廃的で鬱蒼とした、THE OPUSの革新的なプロダクションで埋め尽くされている。とにかくハードな叩きつけるドラム、不安を煽りながら美しくもあるストリングス、他にもピアノ、ギター、全てがシンプルながらも混沌とした音の渦に飲み込まれてゆく様は正に圧巻で、類を見ない独特の世界観を構築している。インダストリアル・ロックの様な空気というか….

META MOとLUMBAの2人だが、彼らのラップはトラックに合っていると言うより戦ってる、と言った方がシックリ来る。THE OPUSの作り出す音の津波を、乗りこなすのではなく、モーゼの如く真っ二つにする。サッカーMCモノのような定番から生物の起源まで、幅広いトピックを病んだ比喩とアグレッシヴなデリヴァリーでトラックに刻んでゆく様は、正に圧巻だ。

多くの曲にフィーチャーされた、シカゴのターンテーブリスト達によるスクラッチもかなり強力で、このアルバムのヒップホップ濃度を極限まで高めている。ドープ!

当然の事ながら、徹底的にダークで黙示録的な16曲は万人にお勧めできる物では決してない。リリックも含めて、リスナーに相当の集中力を要求するため、BGM的に音楽を聴く人にはまず向いてないだろう。だが、これほど独創的で密度の濃いアルバムはナカナカない。このアルバムは、シカゴが生んだ類稀な才能を持ったアーティスト達が、我々のような音楽に刺激を求めるハード・リスナーに与えてくれた最高の褒美だ。