SADAT X “WILD COWBOYS”

BRAND NUBIANのデビュー作”ONE FOR ALL”ではPUBAの陰に隠れてあまり目立たなかったSADAT Xだが、GRAND PUBAが抜けたセカンド”IN GOD WE TRUST”ではすっかりグループの顔になっていた。彼ほど個性的なMCが目立たなかったのが不思議だが、それだけPUBAが偉大だったという事か。グループの3作目”EVERYTHING IS EVERYTHING”に続く96年のソロ・デビュー作。

MCにとって声が重要な要素である事はGURUも言ってたが、SADAT Xを聴くたびに痛感する。彼のハイトーン・ヴォイスはそれだけでリスナーを魅了する。とにかくファンキーだし、圧倒的な存在感でビートを支配している。GRAND PUBAを迎えた”OPEN BAR”は気心の知れた者同士の緩やかなフリースタイル。比べて、MONEY BOSSやDEDIのようなハスキーな声のMCと共演すると、共演者が平均程度のMCなせいか、SADATの個性がより映えるように思う。ともあれ、ヒップホップでは珍しいウェスタン物語”HANG ‘EM HIGH”、質問に答える形で今後の予定や自身のクルーWILD COWBOYSについて語る”THE INTERVIEW”、キャリアを振り返る”MOVE ON”、ニューヨークを描写する”ESCAPE FROM NEW YORK”など、聴き所は多い。

サウンド面では、DIAMOND DやBUCKWILD、SHOWBIZ、PETE ROCK、DA BEATMINERZといったニューヨークを代表するプロデューサー達が集結、文句なしの仕事振りだ。今思うと、この頃が彼らの世代にとっては最後の見せ場だったな、という気もするが。個人的には、一聴してPETE ROCK作と分かる”ESCAPE FROM NEW YORK”がベスト。

あまりに時代錯誤なセルフ・プロデュースの”THE FUNKIEST”だけは毎回スキップしてしまうが、それを除けば粒揃いの充実した内容。なかなか渋いアルバムだ。