SAGE FRANCIS “STILL SICK… URINE TROUBLE”

東海岸はロード・アイランド出身、SAGE FRANCIS。2000年のスクリブル・ジャム、MCバトルのチャンプとして名高い彼は、プロデューサーのJOE BEATSとのグループNON PROPHETSに、生バンドを従えたA.O.I.という2つのユニットの顔でもある。この自主CDは、NON PROPHETS名義で出した2枚の12インチや、フリースタイル等を収録した物で、アルバムではない。CD-Rであるため当然のごとく音質は悪いが、どれも必聴の代物ばかりである。(因みに、インナースリーヴには本人の物と思しきサインとイラストが…)

シンプルなトラックでSAGEが跳ねる”THE TIME OF MY LIFE”、哀愁漂うビートに”MAJORITY RULE”は、トラック、ライム共にクソドープで、これがベスト・トラックだ。ファンキーなギターにラウドなドラムがドープな”EYE OF THE TIGER”、ヒップホップの基本に忠実なところを聴かせる、ジャジーな”ALL WORD, NO PLAY”、やたらキャッチーな”WHORE MONGER’S SING ALONG”、ダークなトラックがドープな”COME COME NOW”(「現在と愛し合え/過去はファックしろ」)、タイトルが全てを物語る”ANDY KAUGHMAN”等など、どれもドープだ。それにしても、”KFC”は面白すぎる。このガキ、マジらしい。

フリースタイルモノでは、8分に及ぶAPATHYとのフリースタイルが最高。完全即興とは思えない程の自然な掛け合い、歪んだユーモア、全てが素晴らしい。とにかくドープ!SLUGとのフリースタイルも素晴らしく、貫禄だ。ポエトリー・リーディングの大会、SLAMでの模様を収録した”MULLET”は、SAGEのヒップホップ観をその出会いから、ユーモアたっぷりに語っていて、我々のようなヒップホップを”選んだ”人間にとって、非常に感慨深い内容だ。「ヒップホップは白人に操られたブラック・アート/丁度、ロックンロールと同じ様に…..」、まるでフリースタイルのようなその語り口も素晴らしい。

手元にある曲を無造作に放り込んだ様なモノだが、その生々しさがこの作品の最大の魅力になっている。とにかく、SAGE FRANCISのラップが素晴らしい。柔軟なデリヴァリーにタイトなライム、高度なフリースタイル・スキル、自虐的で捻くれたユーモア。あらゆるヒップホップ・ジャンキーにとって、必聴だ。