DELTRON 3030 “DELTRON 3030″

AUTOMATOR、DEL、KID KOALA。それぞれの分野を代表する奇才達によるアルバム。このアルバムを一言で表すとそういう事になるが、結果はそんなものではない。KOOL KEITHとの”DR. OCTOGANECOLOGYST”でもその才能を発揮していたAUTOMATORだが、ココでのプロダクションは軽くそれを超えている。DELは勿論最高のプロダクションを得ていつに無く元気だし、KID KOALAのスクラッチはアルバムを通してDELやAUTOMATORと同様の存在感を放っている。3030年のヒップホップ、というコンセプトを軸に、素晴らしいアルバムとなった。

AUTOMATORの、恐らく彼のキャリアでもベストに入るであろう近未来的オーケストラ・トラックと、いまだ衰えを知らないDELの粘っこいフロウ/リリカルスキル、トラックの一部と化したKID KOALAのスクラッチとが完璧に融合した”3030″は、アルバムの幕開けに相応しいドープチューン。スキットを挟んでの”THINGS YOU CAN DO”も、ハードなドラムに絶好調のDEL、終盤のスクラッチ、どれもが最高。個性の強いアーティストのコラボレーションは一歩間違えるととんでもなく外す事もあるが、この3人にそんな心配は不要のようだ。”VIRUS”と”UPGRADE”では、DELのコンピューター・ライムが炸裂している。優れた比喩を駆使してのテクノロジー批判、教育の重要性をライム、AUTOMATORのプロダクションもタイト、鋭いスクラッチは勿論KID KOALA。DELが一歩引いての”MASTERMIND”は、AUTOMATOR賛歌。KID KOALAのスクラッチにも、大きなスポットが当てられている。

DELのフロウが炸裂するのが、メロディアスな”MADNESS”。冒頭の歌うようなフロウは正に真骨頂、ユニティを訴えたライムもポジティヴだ。”TIME KEEPS ON SLIPPING”の主役は、フックを歌うDAMON ALBARNだ。疾走するトラック上で裏声が全開。”TURBULENCE”でのDELの近未来ライムは、そのまま今の社会批判。”エイリアンが降り立って言った、この惑星は侵略する価値も無い”。レイドバックした”LOVE STORY”も、同様に男女の力関係をライム。ホーンが最高にファンキーな集大成”MEMORY LOSS”では、SEAN LENNONがヴォーカルで色を添えている。

3人とも出過ぎない最高のパフォーマンスで、一つの傑作を作り上げる事に成功している。多くの著名人が参加したインタルードもコンセプトを強化しているし、これほどアルバムらしいアルバムも珍しい。必聴だ。