LYRICS BORN “LATER THAT DAY…”

DJ SHADOWらと共にQUANNUMの前身であるレーベルSOLESIDESの設立メンバーの1人であり、SOLESIDESの記念すべき第一弾リリースだったASIA BORN名義でのシングルやLATEEFとのLATRYXでの活動で知られる日本生まれの日系人MC、LYRICS BORN。遂にリリースされたソロ・デビュー・アルバム。

LYRICS BORNは未だに過小評価されているように思う。単純にスキルが凄いとか、ソウルが滲み出るような声がカッコ良いとか歌詞が良いとかもあるが、彼の新たなスタイル対する飽くなき欲求とその成果が、その後のMCに与えた影響は大きい。待望のソロ・デビュー作となった本作に於いても、オーソドックスなMCイングから、声色を変えての一人二役や、歌ともラップともつかない徹底的に抑えたデリバリーを聴かせたり、様々な実験を試みている。が、彼が本当に凄いのは、新しい試みを決して難解にせずポップに聴かせ切る所にあるんじゃないかな。

プロダクションは2曲を除いてLYRICS BORN自身による。ファンクやソウル、レゲエに至る様々な要素が混在していて、風通しの良さが光っているし、前述したポップさを決定付ける分かりやすい魅力に溢れている。個人的なお気に入りは、LYRICS BORNの真骨頂”RISE & SHINE”と、盟友LATEEFとのコンビネーションが別格な”LAST TRUMPET”の2曲かな。

結論としては、長いキャリアを総括するような風格漂うアルバム、といったところ。オーソドックスだが温もりを大事にしたトラックに、LYRICS BORNの唯一無二のラップが絡む。実に人間味溢れる作品だ。