PIGEON JOHN “PIGEON JOHN IS DATING YOUR SISTER”

アーティスト集団L.A. SYMPHONYの中でも、際立ったキャラ立ちでソロとして頭一つ抜け出した感があるPIGEON JOHN。セカンド・ソロ。

とにかくキャッチーで聴き易いPIGEON JOHNのラップ。軽快に跳ね回ったり、メロディアスにユラユラと漂ったり。彼のリリックは悲観的で自虐的、救いようがない皮肉屋なのだが、飄々としたキャラクターのお陰か、内向きの根暗さなど微塵もなくユーモラスだ。

冒頭の”HIGH SCHOOL REUNION”から”EMILY”までの流れは完璧と言って良い。その”HIGH SCHOOL REUNION”では、同窓会が迫ってるのに金も職もなく夢を追っている自分を卑下し、”IDENTITY CRISIS”では16才の時にナンパした14才の女に「歩き方は黒人なのに態度は白人」と振られた事がトラウマになって、未だに「もっと歌った方が良いのかな?それともラップだけにすべきかな?」と悩んだりする。かと思えば、”DECEPTION”では「ジジイになって後悔するなら今死んだ方がマシ」と夢に賭ける決意をライムしたりもしている。

個人的なベスト・カットは、”EMILY”だ。「何よりも優先してた」はずの彼女が妊娠した途端に、「こんな事のために夢を諦めるのなんてゴメンだ/…/これは俺の人生、誰のものでもない」から、夜逃げ!4年後に再会し「もうどこにも行かないでね」と懇願する幼い娘からも、逃げる!実話なのかは知らないけど、とにかく酷い曲。最高。

殆どPIGEON JOHN自らが手掛けるトラックは、素朴ながら、流石に自分のヴォーカルの活かし方を心得ていて良い感じだ。好調な序盤と比べるとグダグダな中盤が勿体無いが、全体を通してPIGEON JOHNの個性が光る良盤だ。