基本的に捨て曲はないのだが、最も魅力的だったのが、WHY?とODD NOSDAMによるユニット、REACHING QUIETの”113TH CLEAN”だ。幾つかのセクションに分けられたODD NOSDAMのトラックは、テレビや古い映画からのヴォーカル・サンプル、とにかく重たいドラム、おどろおどろしいストリングスなど、ただ素晴らしい。WHY?も、歌うような、というより完全に歌っている彼独特のスタイルを最高の形で聴かせてくれる。”RAIN DANCE”は、FAT JONの極めてジャジーなトラックが素晴らしく、雨音すらドープに響く逸品だ。ソウルフルなキーボード、美しいフルート。ラップには、自身のグループFIVE DEEZをフィーチャー。
DOSE ONEがいつも以上にフリーキーに迫る”INVENTOR CRY”も素晴らしい。幻想的なサウンドを手掛けるのは、クラシック・ディスコからジャズまでを基盤とするREVOLUTIONARY INKことROBERT CURCIO。SLUGがキャッチーなトラックで跳ねる”WANT”では、BOOM BOPがSLUGの違った魅力を引き出しているし、APANIの”THE SPIRIT WITHIN”は、ニューヨークのジャズ/ヒップホップ・イヴェントなどで回しているというNICKODEMUSが心地良いトラックを用意。”THE ACTIVE ELEMENTS”では、AESOP ROCKが相変わらずポエティック。
インスト曲では、LULU MUSHIによる”I DREAM”が気に入った。ハープの音色が文字通り夢見心地な逸品で、抑えたDJ SIGNIFYのスクラッチも効果的だ。DJ OSIRISの”LISTEN”は、とにかく怪しい世界が淡々と繰り広げられる。後半にかけて緊張感を増してゆく構成も見事。アルバムの最初と最後を請け負うJELのトラックも、でしゃばらずに役目を果たしている。素晴らしいドラム。
結果的に、非常に完成度の高いコンピレーションとなっている。欠点を抱える曲も勿論あるが、曲順も含めて全体の構成が素晴らしいのでそれ程気にならない。とにかく、独特の空気を持ったアルバムに仕上がった。ココまで一貫したアルバムをまとめたMUSHには感嘆する。取り敢えず耳を傾けて欲しい。